友人
2003/11/12(ペンフレンド) 今と違ってメールもなければ携帯もない時代だった。小学生の時に文通をしていた。相手は栃木県に住む同い年の男の子(T君)だった。のらりくらりだったけど手紙のやりとりは7,8年続いた。彼は中学を卒業するとすぐに自衛隊に入った。T君は自衛隊員であり高校生でもあった。 彼とは一度だけ会ったことがある。文通を始めて5年くらい経った頃だった。突然、電話がかかり、仕事で大阪に来ているので会いたいということだった。手紙でのやりとりは長くしていても、会ったこともない人に会うというのはかなり勇気がいった。彼は駅の改札口を出たところに立っていてすぐにわかった。というより、自衛隊の制服を着ている彼はすごく目立っていて、話かけるのをちょっと躊躇。目立つ制服のわりに、彼はひょろひょろと細くて弱々しい感じの男の子だった。でもまぁ、初めて会ったにしても、話し始めればずっと手紙で会話をしてきた人に違いなくてその続きの友達っていう感じで自然と話ができた。 お互いが大人に近づいていくほどに、お互いのまわりは色々とあわただしくなって、いつのまにか文通は途切れてしまった。あれからどれだけの時間が経ったんだろう。私と同い年だから、彼も今はもういい年齢になっている。彼には関係ないかもしれないけど、イラクへの自衛隊の年内派遣決定?とか言われてる。T君はどうしてるかなぁ・・・とふと思う秋の日でした。 |
2003/8/20(それぞれの生き方) 「あんなまじめな人がなんでやろねぇ〜」と母は不思議そうに言ってたけど、学生時代の彼をよく知ってる私には、どんな気持ちで彼がそういう生き方を選んだのかすぐにわかった。まじめでやさしくて行動力がありリーダーシップのとれる彼は、大学卒業後、そういう彼にぴったりの仕事につき、まわりからも信頼されるりっぱな社会人になっていた。そんな彼が突然離婚し仕事も辞めていた。 彼のことを知らない人なら、違うとらえ方をするだろう。離婚も仕事を辞めることも、もしかしたら再婚することも、彼がまじめだからこそいい加減には通り過ぎることができなかった結果だろうと私は思う。むしろ、若い頃から変わっていない彼らしい生き方だ。でも、この年齢でやり直すのはかなり大変なことだ。彼らしい仕事をもう一度見つけて、いきいきとした人生を歩いていって欲しいと心から祈りたくなった。がんばれ〜 |
2003/7/3(余裕) 友達Mは電話がきらい。「話しは顔見てせんとあかん」というのが口癖。そんな彼女とめずらしく長電話。突然パートをくびになったというのだ。彼女はまじめな性格だけに、そういう筋の通らないないことを一方的に、それも突然言われたことにかなり腹が立ったようだ。でも、はっきりものを言える彼女は、務め先の社長にも自分の言いたいことはしっかり言って、今はすっきりとしたようすだった。 でも、今回いつもとちょっと違ったのは、ずっと仕事をしてきた彼女がもうこれからは仕事はしないと言うのだ。「yumiに相談してもきっとその方がいいって言うと思ってた」って。もちろん私は大賛成。家庭的なご主人にとって彼女がいつも仕事で家にいないというのがすごく寂しそうで、今まで何度も彼女にそういう話をしてきた。それが彼女の頭の片隅に残っていたのかなぁ。「今回いい機会やから、仕事やめてお父さんと余裕の時間を持てるようにしようかなっと思うねん」って。なんか私の方がうれしくなった。 私達の人生、もう残り時間はそんなにたくさんあるとは思えない。働くことも大事だと思う。お金も必要だと思う。でも、もし許されるなら、私は何よりも余裕の時間を大切にしたいと思う。みんながいっぱいいっぱいの生活をしているよりも、家族の中にひとりだけ空きスペースを持った人がいたら、家の中の雰囲気はかなり変わると思う。普段は何の意味ももたないからっぽの空間がいざという時には大きな役割を果す時が必ずある。 「ひまになるから広島に遊びに行くね」って。これから彼女との距離ががんがん近くなりそうだ。 |
2003/4/17(七つ葉のクローバ) 我が家が広島にユーターンしたのとほぼ同じ頃、夫の親友二人も東京と広島市内からそれぞれ故郷に戻って来た。その二人は今、「グリーンバスターズ」として地元で活動していて、農家のサポート的な役割を果たしている。草刈りはもちろん、様々な農作業や、使わなくなった農機具を海外へ送ったりもしていて、我が家も長年納屋を占領していた(この先使うこともない)耕運機を持って帰ってもらい、ずいぶん助かった。また、夏の田舎は草との闘いで、高齢者だけになった農家が多いこの地域では、このグリーンバスターズが活発に活動するのだ。 故郷の自然やそこに住む人たちと密着した仕事をしている彼らを、すごく素敵だなぁと思う。大変なこともいっぱいあるだろうけど、同じ大変さも遠くの都会でより、自分の故郷でならだいぶ違っているはずだ。10代後半に故郷を離れ、長く都会に住み、そして故郷に帰ってきた彼らの世代に共通しているのは、故郷をほんとうに大切に思っていることかもしれない。 昨日の夕方、キャロの散歩の途中に彼らと遭遇。仕事中に見つけたらしい、七つ葉のクローバを私にくれた。もう、いい年の男性が、大切そうに差し出した一枚のクローバに私の目は点になった。七つ葉もめずらしかったけど、それに目を止めることの出来る子供のような心をまだ持ち続けている彼らの原点を見せつけられたように気がして、私も彼らから伝染したみたいに、その小さな葉っぱをポケットにそぉっと入れて自宅に持ち帰り、葉っぱをきれいに広げ押し花にした。きっと、きっと、これから先、心に残る葉っぱになるような気がしたから・・・ |